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開高健の憂鬱

 

開高健と書いて「かいこうけん」と読むか「かいこうたけし」と読むのか議論の分かれるところですが、結局漢字でどう書かれるか、が日本人の名前の重点なのかもしれません。

 

開高自身は、「かいたかけん」と読んで「書いたか、書けん」と語呂あわせで自分を茶化していたようです。しかしこの類まれな作家のそのような韜晦を伴うヒューモラスな一面のみをみて、暗いあまりにも暗いその闇の部分を見落としてはなりません。

 

そこにこそ作家のブンガクと言動の動機が発火する、つまりは発語するトポスが隠されているのです。

 

開高死後、かれの若きころの友人たちが回想録を著しています。そこからも作家が抱えていた闇がうかがい知れます。以下に例を。

 

 

向井敏『開高健 青春の闇』(文春文庫、1999)

 

 

大阪大学での同級生である著者が、タイトルどおりの若き開高を描写する。

 

 

谷沢永一『回想 開高健PHP文庫、1999)

 

 

開高を語るとき避けては通れない著者との交友。開高健ファンには先刻ご存知。この回想は開高ファンなら涙なしでは読めないはず。

 

 

菊谷匡祐『開高健のいる風景』(集英社、2002)

 

 

上記二人ほど親密な関係ではなかったにせよ、著者は学生時代から開高と親しみ生活上の裏話や、『夏の闇』や『珠玉』の女主人公のモデルにも触れている。

 

以上三冊を紐解かれれば、開高健の真実の姿が浮かび上がろうというもの。もちろん作家の残した作品が「開高研究」一次資料ではあるでしょうが、作家が故意に隠そうとしたのかも知れない一面が友人知己の眼から映し出されるているのは確かです。

 

 

また、Pathographie(パトグラフィー、病跡学)の方法で開高健の作風を研究した画期的な書物が以下にあります。

 

仲間秀典『開高健の憂鬱』(文芸社、2004)

 

 

著者は、医学博士で、開高健の一生を躁鬱病との格闘の歴史と見る立場で、その文学の秘密を解き明かそうとしています。わたしは開高健の作品を若い時分から愛読してきましたが、時にあまりにも鬱陶しくてその作品から遠ざかっていたこともありました。この書からわたし自身の感じたことを裏づけされた部分もあり大いに納得したものです。

 

さて前回、日本へ一時帰国した際に開高健の『モンゴル大紀行』を買ったいきさつについて述べました。しばらく遠ざかっていた作家の作品にまた帰ってゆこう、その手始めにこのエントリーでわたしの視点をあらかじめ確認しておこう、というわけでした。

 

これから開高について述べてゆく際には以上に紹介した書物から多くを得ていることをあらかじめおことわりしておきます。

 

 

来年は開高没後二十年、わたしの個人的事情では來独二十年にあたります。作家が生きた時代とはまったく異なってしまったようにみえる世界ですが、しかし作家がよく言ったように「太陽の下あたらしきものなし」でもあるでしょう。開高のいない二十年はわたしが異国で生活を打ち立てるために格闘した二十年でもありました。

 

その節目にあたり、わたしは、しばらく政治、政局からは「俺ら一ぬけた」とシカトして、しばらくわたし本来の興味の赴くところにまかせてブンガクやテツガクに遊んでみようと思います。

 

諸兄諸嬢の寛容なご理解とかわらぬ叱咤激励をお願いする所存です。でないとくじけてしまいそうですわ、とほほ

 

開高健ファンあるいはマニアの皆さん、どうかわたしの知らない開高健をご教示くださいまし。

 

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  1. 2008/10/30(木) 13:58:00|
  2. 開高健
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開高健の資質

宮崎正弘氏の三島由紀夫三部作は、三島ファンには必読です。その第一冊『三島由紀夫『以後』日本が「日本でなくなる日」』は、とくに森田必勝と三島由紀夫の出会いからあの出来事までが、ごく間近かにいてその経緯を知る宮崎氏ならではの筆致で描かれてます。

?

また三島以外にも三島および宮崎氏と関わった保守派知識人が紹介されています。その中で、以外にも開高健との偶会が述べられています。

?

そして以下のように、開高健の本質が村松剛の言葉を借りて見事に喝破されています。

?

「ある酒の席で私が開高健の遺作『珠玉』は駄作だと言ったら、村松剛がこう言った。「開高健の後半の人生は夫人から逃げることにあった」」

?

あたしのが開高の文章から感じる、どうしようもない精神の行き場のなさ憂鬱さの、生活レベルでの背景がズバリ語られていると思います。


イメージ、『ベトナム戦記』朝日文庫(1990年)のカバー


しかしそれだけでは開高の文学の説明にはなりません。それはおいおい述べることとして、今は宮崎氏の開高観に留まりましょう。

?

氏は、新宿二丁目のとある酒場で開高と偶然隣り合わせたことがあるそうです。それがこの書の中で開高に言及する直接の動機になっているわけですが。そしてその開高について氏は次のように書いておられます。

?

「私には、大らかさを装っているが、陰鬱な気分を振り払おうとでもするように飲み歩く開高健の背中に言い知れぬ淋しさが覆い被さって見えた。傑作『輝ける闇』を読み涙を禁じえなかったのは、開高の死後のことだった。」

?

これはあたしが前回述べたことを裏付けていると思いますが、いかがでしょうか?宮崎氏は、「大らかな陰鬱」と開高の生き方を名付けておられます。まさに開高を言い表して妙な形容です。

?

やっぱり見える人には見えるのだと激しく共感を覚える文章でした。

?

かってに引用させていただいたこの書、宮崎正弘著『三島由紀夫『以後』日本が「日本でなくなる日」』(並木書房、本体1700円)


五つ星で推薦させていただきます。是非お買い求めください。

  1. 2006/12/06(水) 03:48:00|
  2. 開高健
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  4. | コメント:4

開高健の憂鬱 

豪放磊落で、釣り,酒、美食に詳しく、その生を堪能して逝ってしまったと思われている開高健ですが、その外面とは異なり深い憂鬱な闇をかかえていた作家であったことは、彼の忠実な読者には当然お分かりのことと思います。

?http://kaiko.jp/gozonji/index.html


しかし、その晩年近くなっての
TVコマーシャルへの露出度とその演技ぶりにすっかりだまされている読者もまだ多いかも知れません。

?

ここにかってアマゾンに投稿した『夏の闇』へのレヴューを再録して、わが開高健論の嚆矢としたいと思います。つまりこれもシリーズ化しようというわけです。(「そんなにシリーズ持って、どないなもんやろ」、というお絵かきお爺さまのお声が聞こえてきそうな気がします。)

?

まあ、とりあえずやるだけやってみましょう、うふふ。この作家は、政治的にあやまったコミットメントを一時行いましたが、しかしその文学をいささかも貶めるものではありません。

  • 文庫:?266ページ?



  • 出版社:?新潮社?(1983/01

    ?闇に住んだ人,?2006/7/4

    開高健は、豪放磊落のマスクの陰にこのような闇を抱えていた。ベトナム従軍によってその本質的な資質をより強く自覚したであろう作家は、この代表作以後は、わずかの優れた短編を残した以外は、繰り返しの多いエッセイや釣り旅行記のようなものを書き散らすばかりだった。痛ましいことだ。本心では、この深い闇から遠ざかりたかったのであろうが、作家としての精神がそれを許さなかった。
    しかし、本作が作家の到達した最高峰の小説作品となった。作品中、雨のパリや、夏のドイツの描写は実に的確である。釣りのシーンも、個人的には他の小説、エッセイ中のものより、本作中のパイク(ドイツ語ではヘヒト)釣りが一番好きだ。小生、新潮社版の『開高健全作品』も所有しているが、この作品は、文庫を読み破る度に買い換えて常備している。いつも旅先で読むためである。作家への愛惜と尊敬の念をこめて、合掌。




    1. 2006/11/30(木) 09:22:00|
    2. 開高健
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    4. | コメント:12

    プロフィール

    丸山光三

    Author:丸山光三
    世界は変容する。変容させようとする力が作用するからだ。しかし、かってにそうはさせまいとする吾等の力を示そう。世界はやつらのものではなく、けっきょくは吾等のものであるべきだからだ。

    イザ・ブログ消滅にともない<丸山光三或問集(旧マルコおいちゃんのヤダヤダ日記)><アムゼルくんのブログ>を吸収合併。

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