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須賀敦子の足音 2

以前、『イタリア夜想曲』の訳者としてその名前をあげ、さらに後ほど詳しく述べると予告した須賀敦子さんの作品との出会いを前回述べました。

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がしかし、後になってわかったのですが実はその前に、『ある家族の会話』ナタリア・ギンズベルグ著、白水社を読んでいたのです。それは須賀さんの和訳でした。その本は、イタリア好きのあたしのために家内がある年の誕生日に送ってくれたものでした。まだ東京に二人で住んでいた頃のことです。

?

あたしは基本的に翻訳書というものを好みません。いつも変な日本語にあって辟易するからです。後に自分で少し翻訳をするようになってその苦労もわかるようになりましたが、しかしこの『ある家族の会話』にはなにも違和感がなく、いい日本語だなと思ったことを覚えていたばかりで、訳者の名前は記憶していませんでした。きっと立派なイタリア文学研究者なのだと思うばかりでした。

?

今はしかし、その「小説」の世界にもどりましょう。

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続けて『コルシア書店の仲間達』,『ミラノ霧の風景』,『トリエステの坂道』と書かれた順番も無視して読み続けたのち、彼女の作品があたしをつかまえる理由もうすうす理解できてきました。

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須賀敦子―霧のむこうに?(単行本(ソフトカバー))?

?http://www.amazon.co.jp/%E9%A0%88%E8%B3%80%E6%95%A6%E5%AD%90%E2%80%95%E9%9C%A7%E3%81%AE%E3%82%80%E3%81%93%E3%81%86%E3%81%AB/dp/4309975666/sr=8-15/qid=1167865259/ref=sr_1_15/503-5010493-6304745ωie=UTF8&s=books


それは彼女の運命と、文章を発語するにいたったその内的経緯だったのです

人は何故小説を書くのか?作家それぞれがその答えを示してくれますが、須賀さんの例は独特でした。
?

それは多分「神」がお導きになったものとしか思えません。あたしは仏教徒で須賀さんのようにカソリックの神は信仰しません、がしかし、「神」がお導きになった、須賀さんご自身がそうお思いになってあれらの作品群を書かれたのではないかと想います。それは祈りにも似た行為だったのではないでしょうか。

?

彼女のイタリア人のパートナーがあんなにも早く亡くならなければ須賀さんは、イタリアで日本文学翻訳者として活躍し続け、日本にイタリア文学を紹介し続けるイタリア文学者としてその生涯を送ったはずです。

?

しかし運命が彼女を日本へと送り返しました。それは彼女にとっては不幸ないきさつででしたが日本の読者のとっては幸福な出来事でした。作家・須賀敦子を日本は持つことができたのですから。

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そしてその作品群をほぼ書き上げると彼女もまた「ひとり足早に歩み去った」のでした。

?

そこにこそ須賀敦子の作品を読む意味があるような気がします。

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ある日本人がいて、ある外国文化と深く関わり、作家とならされ、そしてその深く哀しみに満ちた生涯を美しい日本語で表現し日本の読者に残してくれた?

それができて、作家としてそれ以上なにを求めることがあるでしょうか?たとえ短い生涯でもこれだけの仕事を残すことができた須賀敦子さんの幸福を祝福せずにはいられません。、

いまはただ須賀敦子さんの冥福を祈るばかりです。

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  1. 2007/01/05(金) 23:11:00|
  2. 須賀敦子
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須賀敦子の足音 1

「登場したそのときからすでに完成された作家であった須賀敦子は、わずか八年間だったが「うかうかと人生をついやす」気配などみじんも見せず、旺盛な創作意欲を示しつづけて珠玉のごとき作品群を生み落とした。なのに突然、人にはとうてい忘れがたい記憶をとどめたというのに、自身はあの意思的に響く特徴ある靴音とともに、「アスファデロの白い花が咲く野」を、ひとり足早に歩み去ったのである。一九九八年三月二十日早朝であった。」

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関川夏央氏が須賀敦子著『ヴェネツィアの宿』文春文庫版の解説として記した文章の最後の部分の引用である。

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ある時いきつけの日本書店でふとその表紙の美しさに惹かれ手に取ったその文庫版が、須賀敦子との出会いだった。その表紙で、船越桂氏の『澄みわたる距離』と題された彫刻がなにか特別な精神性をあたしに訴えかけていた。

?

関川氏は好きな文章家である、そう文章家というのがまさにふさわしい文章を書かれる作家とひそかに尊敬している。その関川氏のこの解説文を読んでこの文庫を買うことに決めた。

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『ヴェネツィアの宿』に収められた作品は、小説とも自伝ともつかぬ文章であった。がしかし小説とはなにか?よい小説はいつもそういう問いかけを読者に投げかける。その意味では、それらの作品は小説かも知れない。

?

読了して、作家のことを想った。いったいどういう人だったのだろうかと。その自伝的作品からその生まれた家の格式の高さと裕福さがわかる。まだ海外渡航が不自由なころフランスイタリアに留学できたことでそれが知れる。また描かれた父上の様子からもそれがわかった。作家が、意思の強いそして感受性の鋭い明敏な頭脳の持ち主であることもわかった。

?

がしかし、それだけではない、この作家の何か他のものがあたしの心のどこかを静かにうち続けるのが感じられた。

?

もっとその作品を読まねばならぬ、そう思った。

?

それは作家が亡くなって数年たった後のことだった。海外に居住し、しばらく日本の文学とは離れた生活をしていたためその短い作家生活のことを迂闊にも知らなかったのである。

  1. 2007/01/04(木) 23:07:00|
  2. 須賀敦子
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プロフィール

丸山光三

Author:丸山光三
世界は変容する。変容させようとする力が作用するからだ。しかし、かってにそうはさせまいとする吾等の力を示そう。世界はやつらのものではなく、けっきょくは吾等のものであるべきだからだ。

イザ・ブログ消滅にともない<丸山光三或問集(旧マルコおいちゃんのヤダヤダ日記)><アムゼルくんのブログ>を吸収合併。

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