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【中共異端思想の系譜】その9、周恩来

周恩来についてはかって中共中央文献室で周恩来研究に従事していた高文謙氏の『周恩来秘録』(上村幸治訳、文芸春秋社刊、原著は『晩年周恩来』、明鏡出版社、香港)がその権威をもって最近の周恩来観に影響を及ぼしていると思うが、私見ではその周恩来像、すなわち自己保身と晩節を全うすることに汲々として毛沢東に下僕のように仕えた、というのはまったくの捏造矮小化である周恩来批判はまことに時宜にかなったけっこうなことではあるが、その卑劣な方法については異議を唱えざるを得ない。

 

そのことはわたしは何回もくり返しのべたのであるがここでもういちどくり返しておこう。興味のある方は中断しているが「周恩来評伝に目を通していただきたい。

 

さてまずこの【中共異端思想の系譜】拙稿を通しての結論をここでまず述べてしまいたい。

 

周恩来こそ「中国」共産党の本流、つまり正統であって、毛沢東はそれに対する異端であった、ということである。これは上記中断中の周恩来についての考察で述べようとしていたことでもある。

 

その論証はゆっくりつづけるとして、まずは「批林批孔」へ戻らねばなるまい。

 

文革」中の政治的言動から、周恩来を「文革」受益者とみるのは、大方の意とする文脈とはことなる意味で正しい。これはかなりの説明を要するのだが、ここでは保留しておこう。

 

それは簡単な事実をみればわかる。俗な言葉で言えば、林彪死していちばん得をしたのが周恩来であった。うがって言えば、林彪を死に追いやったのは周だったかも知れない。「逃亡中」のトライデント機撃墜の命令を下したのは周だった、とのもっぱらの風評である。(しかしその墜落機には林彪の死体はなかった、とも噂されることはすでに述べた。)

 

1969年の九全大会までの「文革」前期は、林彪と江青の緊密な合作で彼らの勝利として一区切りしたが、毛沢東と林彪との関係が悪化してついには「林彪事件」として新たな権力闘争が開始された。すなわち江青らと周恩来派との中央主導権をめぐる争いである。

 

なぜなら「林彪事件」後、党政軍の三権を掌握したのは周恩来だったからだ。そしてそれは決して毛沢東の意向に全面的に従ったものではなかったのである。毛の意思は「文革」継続これ一点である。だからこそ江青は「批林批孔」運動により周を打倒しその権力を奪おうとしたのである。

 

周恩来は、「林彪事件」後ただちにその「クーデター計画」といわれる「五七一工程紀要」(五七一はシナ語で「武装蜂起」にあたる「武起義」と同音、「工程」はプロジェクト)を罪状資料として、また「毛沢東の江青同志にあてる手紙」ともにあわせて党内学習文献として下達させた。

 

それは表向きには、林彪の反毛の事実とその計画性、さらには毛沢東が林彪に迫られて仕方なく文革で林に依拠した、などを党内に意思疎通させ事件後の動揺を防ぐためであったが、結果的には毛沢東の絶対権威を大いに貶めることになった。なぜならその資料には林彪の口を借りて毛沢東の失政があげつらわれており、またそんな林彪の力を借りねばならなかった毛の脆弱さが現れていたからである。

 

その結果こそ周恩来の真の目的であったかもしれない

 

そして林彪が有していた党第一副主席には周が就き、軍はその永年来の同伴者である葉剣英らを通じて掌握し、元来保持していた国務院系統の権力とあわせて党政軍の三権はついに周恩来の手中に落ちたのである。それは実質上かって彼が有していた中共最高指導者としての権力の復活であった

 

林彪死亡のニュースを聞いて人民大会堂で執務中の周恩来が号泣した、と高文謙氏は上記書で述べている。それは自己の将来を案じて、と補足しているが、私見ではまったく逆だ。長年の毛沢東への雌伏を覆す好機が到来したことを知り、それまでの苦労を思って泣いたのである。いわばうれし泣き、といってもいいだろう。

 

その後の周恩来の目覚しい政治的成果は1975年の第四回全人代のいわゆる「四つの現代化」政策を国是として確定したことによく表現されている。

 

それはいわば毛沢東治世下の反毛路線であり、中共正統路線への回帰でもあり、さらには今現在の「中国」の「経済大国」への出発点でもあった。

 

しかしそれに至るには激烈な彼にとっては最後の権力闘争を闘わねばならず、それこそまさに今問題にしている「批林批孔」への反撃だったのである。

 

 

 

 

 

1973年の十全大会における指導者たち。左から葉剣英、王洪文、江青、周恩来。周の後ろの黒服着帽は姚文元。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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  1. 2009/05/29(金) 16:54:00|
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世界は変容する。変容させようとする力が作用するからだ。しかし、かってにそうはさせまいとする吾等の力を示そう。世界はやつらのものではなく、けっきょくは吾等のものであるべきだからだ。

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