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村上ブンガクへの壁を超えよ

村上春樹氏がドイツの週刊新聞紙(週刊誌ではない)"Die Welt"(世界)の文学賞を受賞し、7日の金曜日の授賞式で、ベルリンの壁崩壊25周年にからめて壁にちなむ受賞スピーチを行った。その際、「壁に立ち向かう香港の若者たちにこのスピーチをささげる」といった、と媒体各社が報道していた。

https://www.google.co.jp/search…

しかし、"Die Welt"のその件に関する記事に「香港」という文言はない。また、わたしは実際に"Die Welt"を買って読んでみたが、やはり香港云々の文言はない。いったいどうなっているのか?

しかも村上氏は英語でスピーチしたということだが、"Die Welt"に掲載されたスピーチ全文は日本語からの翻訳と明記してある。(Aus dem japanischen von Ursula Gräfe) 訳者 Gräfeはフランクフルトの日本学者で村上ブンガクの翻訳者である。その全文にも「香港」のH字さえない。

考えられるのは、編集部はまず村上氏の日本語によるスピーチ原稿を入手しそれを翻訳した。村上氏は授賞式当日は英語でスピーチし、そこでアドリブで香港云々を付け加えたたということだが、村上氏本人か編集部、あるいは現場にいたものしか実証はできない。村上氏はほんとうに香港の若者を励ます発言をしたのかどうか、誰かわたしの疑問に答えてくれる方はいないものだろうか?

murakami-0076643.jpg

"Das spürbare Gefühl, frei zu sein"


あるいは、こうかもしれない。
村上氏は、11月3日の毎日新聞によるインタヴューが反日宣伝に利用されたことを不快(あるいは不都合)に思い、今回のベルリンでの発言の機会に、香港の民主要求運動に触れることでバランスをとろうとした・・・・。もちろんただの憶測である。

「戦後民主主義」というパラダイムの壁の中から一歩も出ようとはせず、あるいはまったく壁が見えていないのかもしれない某ノータリン賞受賞作家とは異なり、村上氏の壁に対する意識は高い。

しかしそれにしても村上氏が今回受賞した<Welt文学賞>がさて今までわが国で話題になったことがあるだろうか?実はドイツでもマイナーな文学賞である。

また<Die Welt>紙はどちらかといえば右寄りな論評で、同じ週刊新聞紙(週刊誌ではなく新聞紙)でライバルの<Die Zeit>(時代)紙が左寄りなのと好対照である。

村上氏は前回は反日の毎日新聞のインタヴューで反日宣伝に(ここならずもか?)加担してしまったが、今回は<Die Welt>文学賞授賞式でシナの独裁を間接的に批判するという言動を(これも、こころならずもか?)とった。

ちょうど故・司馬遼太郎が朝日にも産経にも寄稿できる稀有な作家であったように、某ノータリン賞受賞作家が朝屁一辺倒であることとは異なる不偏不党(死語か?)性を表したかったのだろうか?(まあそんなことはあるまいが)


村上


さて村上氏の<Welt文学賞>受賞スピーチの全文を読んでいて以下の箇所がまさしく村上氏の文学の核心を自ら語っている、と感じた。

"Wir überschreiten die Mauer, die Wirkliches und Unwirklichem und Bewusstes und Unbewusstem trennen. Wir erkunden die Welt auf der anderen Seite, kehren auf unsere Seite zurück und erzählen in allen Einzelheiten, was wir gesehen haben, ohne uns ein Urteil über die Bedeutung der Mauer oder ihr Für und Wider anzumaßen. Wir schildern nur ganz genau, wie es auf der anderen Seite aussieht. Darin besteht die tägliche Arbeit eines Schriftstellers."
(以下、拙訳)
「わたしたちは、現実と非現実のまた意識と無意識を隔てる壁を超え、そして別の世界を探索しわれわれの世界へ帰り、壁の意味についての判断やまたその賛否についての推定なしに見てきたことのディテールを語ります。つまり別の世界で見えたようにそのまま描写するのです。それがある作家(つまり村上)の日々の仕事なのです。」


Haruki-Murakami-14-.jpg


ここでいう「意識と無意識」は、正確には「表層意識と深層意識」であろう。深層心理学が導入されたころの最初の訳者が誤訳したのだろう。というのも日本語の「無意識」には「深層意識」がもつ豊かさと深さがないからだが、ここでは通説にしたがっておく。

村上氏の読者には自明のことだが、彼のブンガク世界は異界との交流を描く。それは<源氏物語>、<今昔物語>また能の描く世界に通底するわが国文学の歴史伝統なのである。その米語を和訳したようなシンプルな文体に食わず嫌いの拒否反応を起こす方も多かろうが、是非とも虚心坦懐に村上ブンガクの世界を探索して欲しいものである。それが非読者および反村上読者の皆さんが自ら築いた村上ブンガクへの壁を超える事なのである。







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  1. 2014/11/10(月) 16:30:43|
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世界は変容する。変容させようとする力が作用するからだ。しかし、かってにそうはさせまいとする吾等の力を示そう。世界はやつらのものではなく、けっきょくは吾等のものであるべきだからだ。

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